文房具特許の世界

文房具が好きで、特許を手掛かりにその背景を妄想することによって文房具をもっともっと好きになるために、ブログはじめました。といっても、文房具特許についてはド素人で、皆さんと一緒に少しずつ学んでいければと思っています。文房具カフェ会員No.01845 連絡先:bunseka.akiran@マークgmail.com

Item 7: モノワン: 特許を探してみた

では、早速こちらの情報を頼りに、J-PlatPatにて検索しています。

・2007年2月5日発売発売

・口紅サイズのホルダー消しゴム

・フロント回転繰り出し式

・衝撃吸収クッション

 

出願人=トンボ鉛筆、公報全文=口紅 and 消しゴム で検索すると、なんと結果は1件のみ↓ 中味を見てみると、なんとビンゴ。

特開2008-126546(出願日:2006/11/21) 2007年2月5日の発売日ともマッチしますね。出願時の権利範囲はこちら↓

【請求項1】
本体筒内に、筒軸方向に移動し、その操作を本体筒外から行いうるスライダーを設け、このスライダーに棒状体の後端部を装着させて、本体筒の前端に設けた開口部から棒状体の前端部を出没自在とするための棒状体繰出用容器であって、前記開口部を形成する周壁のうち、開口部の開口前端から軸線方向の後向きに少なくとも800μmの範囲であって、かつ内周面から少なくとも1000μmの肉厚部分を、棒状体の硬度よりもA0~A5だけ小さい値のデュロメータ硬度を有するエラストマー樹脂により形成したことを特徴とする棒状体繰出用容器。

 

上記の赤字↑の部分は、下記の衝撃吸収クッションを数値限定していますね。

f:id:bunseka_akiran:20160722013838p:plain

衝撃吸収クッション:消しゴムが触れる周辺を柔らかなラバーで囲みました。このラバーが衝撃吸収クッションとなり、消すときの力で細さ6.7ミリの消しゴムがフチに食い込み、折れるのを防いでいます。

 

デュロメータ硬度がよくわかりません。ググってみたところ、こちら↓のリンク先に説明がありました。

硬度 - ゴムペディア

「デュロメータ」とはゴムの硬さを計測する計測器で、JIS規格準拠した、中硬さ(一般ゴムなど)用の「タイプA」、高硬さ用の「タイプD」、低硬さ用の「タイプE」があり、「タイプA」で計測すると、人肌=A10、消しゴム=A30-40、車のタイ=A65くらいの値とのこと。請求項の中の「棒状体の硬度よりもA0~A5だけ小さい値のデュロメータ硬度を有するエラストマー樹脂」は、「消しゴムの高度よりもA0~A5くらい柔らかいラバー」という衝撃吸収クッションを具体的に表現しているのだと思います。

 

審査経過によると、未審査請求でみなし取り下げになっていますね。出願時からここまで限定しているとなると、「口紅サイズのホルダー消しゴム」「フロント回転繰り出し式」あたりは既に先行技術があったということでしょうかね。

 

ということで、特開2008-126546の明細書内の先行技術文献を確認します。以下明細書を引用します。

 

従来、消しゴムの繰出用容器においては、本体筒内に、前後方向に移動するスライダーを備え、このスライダーに棒状の消しゴムの後端部を装着させて、本体筒の前端開口部から消しゴムの前端部を出没自在とするようにしたものが公知である(特許文献1,2参照)。
しかし、特許文献1,2記載のものは、本体筒の前端開口部が、本体筒と同様なポリプロピレン樹脂等の硬度の比較的大きい合成樹脂材料から形成されているため、使用時に、前記合成樹脂材料よりも硬度の小さい消しゴムの繰出し基部周縁が、前記開口部の開口周縁に当接して折り曲げられたりすると、当接部分を基点にして裂傷等の傷が発生し、折損し易いという問題があった。

特開2003-226096号公報
特開2003-127592号公報

 

やはり、消しゴムの繰出用容器の基本的構成はすでに上記の2件に開示されているようです。順にみていきます。

特開2003-226096(三菱鉛筆株式会社)の審査経過を見ると、出願審査請求後、出願取り下げしており、権利化に至っていませんね。

特開2003-127592(ミクロ株式会社)は登録されていますね(特許第3837717号)。登録された権利範囲はこちら↓

【請求項1】
外筒と内筒を回転可能に嵌挿し、該内筒に軸方向に移動可能に受台を設け、該受台の外周を上記外筒に設けた雌ねじに係合し、上記内筒若しくは外筒を回転した際上記受台が軸方向に移動して該受台に設けた消ゴム等の棒状物を繰り出すようにした消ゴム等の繰出装置において、雌ねじの軸方向の一部に相当するねじ山部を有するラック部材を形成し、上記受台の筒状部の全周に雄ねじを設け、該ラック部材のねじ山部と上記受台の雄ねじがねじ係合するよう上記ラック部材を上記外筒の内面に軸方向に設けたことを特徴とする消ゴム等の繰出装置。

 

ざっと見た感じでは、消しゴムの繰出用容器の基本出願といってもよい内容に思います。ただ、年金不納による抹消になっていますので、本特許の権利は抹消しているようです。

 

トンボ鉛筆の特許出願をトリガに周辺を調べましたが、消しゴム繰出用容器の基本出願の一つと思われる特許第3837717号に辿りつきましたが、権利は抹消しているようで、今回の調査では、存続する消しゴム繰出用容器の基本出願は特定できませんでした。