文房具特許の世界

文房具が好きで、特許を手掛かりにその背景を妄想することによって文房具をもっともっと好きになるために、ブログはじめました。といっても、文房具特許についてはド素人で、皆さんと一緒に少しずつ学んでいければと思っています。文房具カフェ会員No.01845 連絡先:bunseka.akiran@マークgmail.com

Item 13: フリクションシリーズ: 特許を探してみた

ちょっとググってみただけで、有名なフリクションだけでに、フリクションの特許に関する記事も多数ありました。

これらの記事を参照しつつ、前回ご紹介した開発の流れをベースに特許を紐解いていきたいと思います。

 

 1975年「温度変化によって色が変わるインキ」の基本技術に関する開発に成功、という情報がありましたので、1975年に出願している特許を探していきましょう。残念ながらJ-PlatPatのデータベースには蓄積されていませんので、別の特許検索サイトを探すことにします。こちらのULTRA Patentの検索サービスでは、出願番号や発明の名称程度の書誌しか確認できないようですが、古い日本特許も検索対象のようですので、この検索サービスを使って検索していきます。

上述の「消せるボールペンのひみつ」で紹介されているメタモインキの開発者である"中筋 憲一"氏、"熱変色性"をキーワードに検索してみたところ、結果は3件。そのうち以下の2件が出願日も近いので基本出願なのではないかと予想されますが、出願日は1974年。1975年よりも一年前に開発は完了していたのかもしれませんね。中味を確認していないのであくまで予想ですが(^^ゞ

特公昭60-015667
出願日:1974.01.22
発明の名称:熱変色性材料
出願人:パイロットインキ株式会社
発明者:中筋 憲一他

特公昭60-031235
出願日:1974.01.24
発明の名称:感熱変色性材料
出願人:パイロットインキ株式会社
発明者:中筋 憲一他

 

1980年代には、お風呂の中で遊びながら文字を覚えられる知育玩具などに利用されていたとのことですので、J-PlatPatで、出願人=パイロット、公報全文=熱変色性 and 玩具 で特許・実案を検索したところ、ヒット数は627件。最先の出願である実公平06-022399(出願日:1987年02月06日)が、おそらく知育玩具応用の基本出願かと思われます。権利化された権利範囲はこちら↓ なかなか広い範囲で権利されています。

【請求項1】玩具形象に造形された外殻体2と、該外殻体2に収容された内蔵物3からなり、前記外殻体2は少なくとも一部が透明プラスチック材21により構成され、該透明プラスチック材21は温度変化により無色、着色の可逆的色変化を呈する可逆熱変色性材料22を分散状態で固着させており,着色状態で内蔵物3を不可視状態に、無色状態で内蔵物3を可視状態に可逆的に視覚させる内部隠顕玩具1。

実施例では、模型自動車玩具のエンジン部が不可視状態と可視状態に自在に変化可能な事例であったり↓

「前記の模型自動車玩具1は、25℃以下ではボンネット部分が青色に着色しており、内部を隠蔽してエンジン部3が不可視状態であるが、25℃以上の温度では青色が消色し、エンジン部3が可視状態となった。」

その他、潜水艦玩具、怪獣玩具、ロボット玩具、動物玩具も開示されており充実しています。ちなみに、現在でも、カラーズ Vシリーズとして変色する玩具は販売しているようです。

 

 

 1990年代からは、示温剤として広く利用されていた、とのことですので、出願人=パイロット、公報全文=示温 で検索したところ、ヒット数は201件。最先の出願である実公平06-046709(出願日:1982年11月01日)熱変色性印刷物をご紹介します。権利化されている権利範囲は以下の通り。

【請求項1】支持体面上に設けられた非変色性インキにより印刷された文字又は文字と記号による情報と、少なくとも一層の熱変色性インキによる文字又は文字と記号からなる前記非変色性インキによる印刷情報とは異なる情報を設けた層が重ね刷りされてなり、前記熱変色性インキによる印刷情報は所定の温度域で着色状態、前記温度域外の温度では実質的無色であり、前記着色状態の印刷情報は非変色性インキによる印刷情報に比較して濃い視覚濃度に設定されていて、所定の温度以上又は以下で変色するものであり、全印刷情報のうち相対的に最も濃色である印刷情報のみが、それ以外の印刷情報の視覚を越えて択一的に視認できるよう構成されてなる熱変色性印刷物。

本出願の実施例には「白色の支持体面上にグラビア印刷により、淡青色の一般印刷インキを用いて「冷やして下さい」の文字を印刷し、次いで10℃以下で青色に顕色する熱変色性インキを用いて「飲み頃です」を、さらに4℃以下で濃黒色に顕色する熱変色性インキにより「冷え過ぎです」の各文字を重ね刷りしてラベルを得た。」という記述もあり、1990年代に広く利用された示温剤については既に1982年に出願されていたのですね。

 

2002年にはマイクロカプセルを筆記具用インキにも応用できる2~3ミクロンに小型化することに成功とのことですので、出願人=パイロット、請求の範囲=マイクロカプセルで検索したところ、ヒット数は620件。2002年代の最先の出願である特開2003-206432(出願日:2002年01月25日)摩擦熱変色性筆記具及びそれを用いた摩擦熱変色セットを紹介します。権利化された権利範囲は以下の通り。2~3ミクロンに限定せず、少し広めの権利を獲得していますね。一方、摩擦体(消去用ラバー)の構成は限定しています。

【請求項1】
25℃~65℃の範囲に高温側変色点を有し、平均粒子径が0.5~5μmの範囲にある可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を水性媒体中に分散させた可逆熱変色性インキを充填し、前記高温側変色点以下の任意の温度における第1の状態から、摩擦体による摩擦熱により第2の状態に変位し、前記第2の状態からの温度降下により、第1の状態に互変的に変位する熱変色性筆跡を形成する特性を備えてなり、エラストマー又はプラスチック発泡体から選ばれる摩擦体が筆記具の後部又は、キャップの頂部に装着されてなる摩擦熱変色性筆記具。

ご紹介した出願含め、多数の出願を生んだ、30年の苦闘の末、2005年、念願の実用筆記具としての製品化を実現したのですね。感慨深いです。

 

フリクションの特許を調べる中で、2011年2月11日にこんな訴訟があったことを知りました。

訴状の検索を試みたのですが見つからず、ここからはこの記事を頼りに完全妄想で進めていきますのでご容赦ください。記事中には、「訴状によると、パイロットは2010年に関連特許の登録を受けており」とありますので、公報全文=熱変色性 and ボールペン で検索し、登録日が2010年のものを眺め、特許第4601720号が関連特許の一つではないかと推定しました。登録されている権利範囲は以下の通りで、イ号の特徴である、摩擦体がキャップの頂部にあることを限定している請求項5もありました。

【請求項1】
少なくとも可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具であって、
前記可逆熱変色性インキは、平均粒子径が0.5~5.0μmの範囲内にあるマイクロカプセル顔料を水性溶媒中に分散させた構成となっており、該マイクロカプセル顔料は、25~65℃の範囲に高温側変色点を有し、
前記筆記具は、弾性体からなる摩擦体を備え、該摩擦体は、曲率半径Rが1mm~10mmの凸曲面形状の擦過部を有し、手動操作で擦過したときの摩擦熱により、浸透性を有する紙に形成された前記可逆熱変色性インキの像又は筆跡を前記所定温度以上に加熱し、第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させることを特徴とする筆記具。

【請求項5】
前記摩擦体がキャップの頂部又は軸胴の後端部に装着され、該摩擦体の外径Dと出長さLとがL<Dを満たし、前記摩擦体の抜け力が10N以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の筆記具。

一方、三菱鉛筆についても、出願人=三菱鉛筆、公報全文=熱変色で検索し、提訴時点である2011年2月11日に出願済となっている案件を眺めたところ、 例えば、特開2010-247358(出願日:2009年04月13日) 筆記具 などがイ号に関連するかもしれません。

一見すると、パイロットの出願は広いように思うのですが、もしかすると数値限定の部分が三菱鉛筆のイ号との関連性に影響を与えてしまったのかもしれません。現に、下記ブログによると、東京地裁の口頭弁論でパイロット側が自らの訴えに理由がないことを認める「請求放棄」を申し立てて終結したとのことです。

 

少し横道にそれてしまいましたが、今回の調査はこのあたりでお開きにしたいと思います。遅い時間帯になってしまいました(^^ゞ

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