文房具特許の世界

文房具が好きで、特許を手掛かりにその背景を妄想することによって文房具をもっともっと好きになるために、ブログはじめました。といっても、文房具特許についてはド素人で、皆さんと一緒に少しずつ学んでいければと思っています。文房具カフェ会員No.01845 連絡先:bunseka.akiran@マークgmail.com

Item 16: TSUNAGO: 特許を探してみた

いつものように、J-PlatPatで検索していきます。出願人=中島重久堂 で検索したところ、なんとヒット数2件。その中に、TSUNAGOの出願ありました! 発明者は、社長の中島 潤也さんですね。

特開2016-97640(出願日:2014.11.26)鉛筆切削具

本出願は早期審査請求されていて、既に権利化されていますね(特許第5725683号)。出願時の権利範囲も補正なくそのまま登録になっているようです。内容は、TSUNAGOの最大の特徴である「鉛筆の端面を切削して連結用の凹部を形成する凹部形成部」のみを限定する秀逸な権利範囲ですね。

【請求項1】
鉛筆の端面を切削して連結用の凹部を形成する凹部形成部を備える鉛筆切削具であって、
前記凹部形成部は、鉛筆の端部が挿入される円柱状の挿入孔を有する本体と、前記挿入孔の内部に鉛筆の端面と当接するように配置された切削刃とを備え、
前記切削刃は、半円状の断面を有し、前記挿入孔の軸線に沿って延びる平坦面が形成されており、
前記本体は、前記平坦面と対向するように形成されて前記挿入孔から切り屑を排出する排出部を有する鉛筆切削具。

 

創業80年以上の歴史がある中島重久堂さんの特許出願が全2件でしたので、もう1件の内容も気になり、確認してみました。

特開2016-34706(出願日:2014.8.1)鉛筆削り器

出願時の権利範囲はこちら↓ 超短いです笑 現在、審査中のようです。

【請求項1】
鉛筆挿入孔に沿わせて長短2枚の削り刃を配置したことを特徴とする鉛筆削り器。

本件は、クツワさんと中島重久堂さんとの共同出願で、おそらく、クツワさんの「STAD 2枚刃鉛筆削り」なのではないかと思います。

出願人=クツワ株式会社で、特許・実案を検索したところ、ヒット数は72件。クツワさんは知財を重視している企業のようですね。ここからは、完全に妄想なのですが、2枚刃鉛筆削りの開発をクツワの日浦 正仁さんと中島 潤也社長が進めるなかで、中島社長が、クツワさんの知財戦略に共感し、TSUNAGO関連についても特許出願したのではないでしょうか。

 

ここで、7月25日から、文献番号から世界各国の特許庁が保有する出願・審査関連情報(ドシエ情報)を照会サービス「ワン・ポータル・ドシエ(OPD)照会」がはじまっているようですので、TSUNAGO関連の出願と思われる特開2016-97640が外国出願しているのか確認してみました。その結果、、、ありました、ありました。PCT出願しているようです(WO.2016084549.A1)。PCT出願とは、PCT(特許協力条約)に基づいて、国際的に統一された手続を自国の特許庁に対して行うことにより、PCTの各締約国に対して特許出願をしたのと同じ効果が与えられる出願のことです。おそらく、このPCT出願を基に、米国や欧州に出願するものと思われます。特許出願2件目にして外国出願するとは、事業の海外展開を考えているのでしょうか。関連する記事を見つけましたのでご紹介しておきます。

www.projectdesign.jp

記事によると、中島社長は、創業80年(2013年)を目前に海外進出を模索し、2013年1月には、パリの国際雑貨展「メゾン・エ・オブジェ」に初出展。透明なアクリルケースに、カラフルな鉛筆削りを積み重ねて展示するなど、「見せ方・伝え方」を工夫。結果、MoMAをはじめ、ヨーロッパの有名小売店からも引き合いが相次ぎ、海外販売を拡大することができたとのこと。TSUNAGOも、2015年1月23日フランスの「メゾン・エ・オブジェ」の展示会でデビューを果たし、外国出願で自社のビジネスをしっかり保護しつつ、さらなる海外販売拡大を目論んでいるのかもしれません。

 

もうひとつ、記事にあったトリビアとして、中島社長の次女はインドに留学経験もあり、すでに商談成立にも貢献されているとのこと。彼女と、中島社長はじめ、0.01mmのズレも許さない、精緻な技術力を有する職人たちとの盤石の布陣のこれからに、目が離せません。