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文房具特許の世界

文房具が好きで、特許を手掛かりにその背景を妄想することによって文房具をもっともっと好きになるために、ブログはじめました。といっても、文房具特許についてはド素人で、皆さんと一緒に少しずつ学んでいければと思っています。文房具カフェ会員No.01845 連絡先:bunseka.akiran@マークgmail.com

Item 24: tenori はんこのり: 特許を探してみた

いつものようにJ-PlatPatで調査していきますが、「テープのり」の表現方法がわからなかったので、まずは意匠で検索してみることにします。

 

出願人=ニチバン だけで、検索してみたところ、ヒット件数は、111件。図面を順にみていくと、あ、ありました~。「tenori はんこのり」らしきシルエットの意匠出願はこちら↓

 

意匠登録第1470791号(出願日:2012.11.17)テープディスペンサー

 

プレスリリースの発行日は2013年1月18日ですから、出願日とも符合しますね。本意匠出願の創作者を発明者として特許・実用新案を検索したところ、余賢模氏の特許出願を発見!

 

特開2014-14970(出願日:2012.7.9)テープディスペンサ

写真は「tenori はんこのり」ですが、特許出願にある図面とは少し違いますね。特許出願の方には、側面の部分にボタンのようなものがあります。

 

こちらが出願時の権利範囲になります。

【請求項1】
一端に開口部を有する分解及び組立可能なケースと、
上記ケース内に配設され、粘着剤が塗布されたテープを巻装する供給リールと、
上記ケース内に配設され、上記供給リールから引き出されて使い終わったテープを巻き取る回収リールと、
上記供給リール及び回収リールにそれぞれ装着されるギアと伝動ギアとからなる巻取機構と、
上記供給リールと回収リールを支持するインナープレートと、
上記ケースの開口部を介して外側に設けられ、引く際、上記テープを案内するロールチップ及び上記ロールチップの近傍に配設され、スタンプの際、テープを押し付けるスタンプ圧板と、
上記ケースの開口部を介して内外側に収納及び引き出し可能であって、ばね部材の付勢力によって常時上記ロールチップ及びスタンプ圧板の外側に移動され、上記インナーケースに設けられた係止突起と係合して上記ロールチップ及びスタンプ圧板を外側に露呈する引き作業位置と、上記係止突起との係合が解除されたスタンプ作業位置に切り換え可能なスタンププレートと、
上記スタンプ作業位置から引き作業位置に切り換える際のスタンププレートの収納時に、上記回収リールへのテープの巻き取りを回避する巻取回避機構と、
を具備することを特徴とするテープディスペンサ。

 

赤字の巻取回避機構というのは、実は「tenori はんこのり」にはない機能のようなのです。巻取回避機構の説明部分を出願明細書から引用します。

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スタンプ作業の途中、引きへと機能を切り換える際、使用者が回避ボタン19を押し込むと、図5Bに示すように、圧縮コイルばね49の付勢力に抗して回避操作棒45、中間ギア43及び回収リールギア34全体が上昇することになり、この状態でスタンププレート14を上昇させても、ラック42と中間ギア43が噛合しなくなるため、中間ギア43の回転力が発生しなくなるのと同時に、伝動ギア33b側に回転力が伝わらなくなるため、供給リール10側では新しいテープの供給が行われなくなり、結局スタンプ・引き機能の切り替えの際、テープの無駄が発生するのを防ぐことができるようになる。

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妄想するに、テープの無駄が発生することを防止するための回避ボタンが企画当初は搭載されていたものの、最終的にはその機能をドロップしたものと思われます。

 

ここで、本出願明細書で開示している先行技術を確認することにします。

 

特開2009-241344(出願日:2008.3.31)粘着転写具

 

先行技術に対する説明はこちら↓

「特許文献1に記載の粘着転写具によれば、ばね部の付勢力に抗して転写ヘッドを被転写面に押圧して、粘着剤の被転写面へのスポット転写(スポット作業)と、転写ヘッドを被転写面に押圧した状態で移動させて、粘着剤の被転写面へのライン状の転写(引き作業)とを選択的に行うことができる。」

まさに、テープのりDSの特徴そのものですね。あれ、でもテープのりDSの発売日は2007年10月16日。とするとこれはテープのりDSの改良版ということですね。ちょっと本特許出願の権利範囲を見てみましょう。

 

【請求項1】
ケース内に、
テープ基材の片面に粘着剤を有する転写テープを巻装する回転可能な供給リールと、
上記供給リールから引き出された転写テープのテープ基材を巻き取る回転可能な巻取リールと、
上記供給リールから引き出された転写テープの粘着剤を被転写面に転写する転写ヘッドと、
上記供給リール及び巻取リールにそれぞれ装着される互いに連動するギアからなる巻取機構と、
上記転写ヘッドの先端側に出没可能な押し板部と、上記ケースに突設された係止突起に当接係合して上記押し板部を上記転写ヘッドの先端側に押圧するばね部及び該ばね部の付勢力に抗して上記ケース後方側に移動する際にのみ上記供給リールに装着される供給ギアに噛合するラチェット爪を一体に有する作動プレートと、
を配設してなり、
上記ばね部の付勢力に抗して上記押し板部を後方側へ移動し、上記転写ヘッドを被転写面に押圧した後、転写ヘッドを被転写面から後退して、上記粘着剤の被転写面へのスポット転写、又は、上記転写ヘッドを被転写面に押圧した状態で、被転写面上を移動させて、上記粘着剤の被転写面へのライン状の転写のいずれかを選択的に行えるように形成してなる、
ことを特徴とする粘着転写具。

 

テープのりDSとの構成の差異がわかりませんね。テープのりDSに関連する出願を見つけるため、出願人=ニチバン、発明の名称=転写 で検索しところ、無事、見つけることができました。

 

特開2008-279622(出願日:2007.5.9)粘着転写具

 

テープのりDSのプレスリリースは2007年10月9日発行ですから、出願日もマッチしていますね。同様に権利範囲をみてみましょう。

 

【請求項1】
ケース内に、テープ基材の片面に粘着剤を有する転写テープを巻装する回転可能な供給リールと、上記供給リールから引き出された転写テープのテープ基材を巻き取る回転可能な巻取リールと、上記供給リールから引き出された転写テープの粘着剤を被転写面に転写する転写ヘッドと、を配設してなる粘着転写具であって、
上記転写ヘッドは、
一端が上記ケースに揺動可能に枢着され、自由端部に上記転写テープとの接触面が円弧状をなす第1の転写部を具備すると共に、第1の転写部と枢着部との間に位置する平坦状の転写面を有する第2の転写部を具備し、かつ、自由端側を被転写面側に付勢するばね部材を具備してなり、
上記ばね部材の付勢力に抗して上記第2の転写部を被転写面に押圧した後、第2の転写部を被転写面から後退して、上記粘着剤の被転写面へのスポット転写、又は、上記ばね部材の付勢力によって上記第1の転写部を被転写面に押圧した状態で、被転写面上を移動させて、上記粘着剤の被転写面へのライン状の転写のいずれかを選択的に行えるように形成してなる、
ことを特徴とする粘着転写具。

 

う~ん。正直2つの請求項の差はよくわかりません。

実施例を比較すると、テープのりDSの出願の方では、スポット転写するときに、第2の転写部がテープを後ろから押し、改良版の出願の方では、押し板部がテープを後ろから押圧するように構成されています。そして、改良版の方の押し板部は、四角いハンコのような形状です。

 

ここからは、妄想ですが、特開2008-279622(出願日:2007.5.9)に基づくテープのりDSを2007年10月16日に発売。スポット転写/ライン状の転写機能を有するテープのりの開発を続け、四角いハンコのような押し板部でテープを押圧するタイプを開発し、特開2009-241344(出願日:2008.3.31)に出願。さらに改良を進めていって、特開2014-14970(出願日:2012.7.9)の技術をベースとした「tenori はんこのり」を2013年2月18日に発売、という流れになりますかね。

 

少し機構は違いますが、特開2009-241344で開示される四角いハンコのような押し板部が、「tenori はんこのり」のどこかに活かされているのかもしれません。

 

本日はこのあたりで調査を終えたいと思います。

 

※それにしても、テープのりのような複雑な機構を表現した権利範囲を図面なしで説明するのは相当に厳しいですな。特許図面を正しく引用する手法を確立しなくては。

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