文房具特許の世界

文房具が好きで、特許を手掛かりにその背景を妄想することによって文房具をもっともっと好きになるために、ブログはじめました。といっても、文房具特許についてはド素人で、皆さんと一緒に少しずつ学んでいければと思っています。文房具カフェ会員No.01845 連絡先:bunseka.akiran@マークgmail.com

Item 28: ケシポン: 特許を探してみた

こちらで「ケシポン」の開発秘話が語られていますね。インタビューに応えているのが第一マーケティング本部  事務用品division 米津さん。

vol.86:プラスステーショナリー(1)〜「ケシポン」とは?

 

そうだ! 思い出しました。米津さんって、以前、フィットカットカーブの特許を探したときにも登場されてましたね~。すごいな~米津さん。

bunseka-akiran.hatenablog.com

 

という訳で、出願人=プラス株式会社、発明者=米津 で特許・実用新案を検索してみたところ、ヒット件数は1件。あれ? 鋏に関するものしか検索されない。おかしいですね。いろいろと試行錯誤してみたところ、わかりました。米津さん、元々はプラスステーショナリー株式会社に所属されていたのですね。ちなみに、プラス株式会社は、2010年2月にプラス ステーショナリー株式会社を合併しているようです。

 

では気を取り直して調査を再開します。出願人=プラスステーショナリー株式会社、発明者=米津 で検索したところ、ヒット件数は2件。あ、スタンプ装置という名称の案件がありました。

 

特開2009-255515(優先日:2008.1.18)スタンプ装置

 

ですが、ニュースリリース発行日である2007年11月21日よりも後の出願ですね。出願時に主張している権利範囲はこちら。

 

【請求項1】
一面を印面とした印字体を備え、印面を転写対象に押しつけることにより印面のパターン形状を転写するスタンプ装置において、
該印面は、文字や図柄又は絵柄或いは直線や曲線が間隙の面積を小さくするように密集して配置されたパターン形状を備えることを特徴とするスタンプ装置。

 

先の出願にPCT出願が存在する可能性もありますのでEspacenetでも検索してみましたが特定できず。特開2009-255515のファミリーを確認したところ、US, IT, AT, DE, FR, GB, CN, KR, SG, TWに移行しており、本出願が如何に大切であるか、わかりますね。さらに、EPに移行していないところを見ると、欧州での早期の権利化を狙っていると思われます。私の勝手な妄想ですが笑

 

各国の審査状況は確認しておりませんが、残念ながら特開2009-255515は拒絶査定となってしまっているようですね。

 

ちょっと横道にそれますが、こちら↓の2010年3月掲載のケシポン誕生ストーリーの中では、印面パターンが具体的に記述されています。「最終的に行き着いたのがアルファベットだけを組み合わせた現在のパターンでした。I、O、Cなど、余白が多いものは排除し、アルファベット26文字の中から10文字(A、B、E、G、H、K、M、V、W、X)を選びました。この10文字に絞り、どんな文字列でも対応できるように角度を変えるなどして出来上がったのが、ケシポンの印面パターンです!」とのこと。

bungu.plus.co.jp

 

仮に、特開2009-255515の出願明細書の中に、上述のような印面パターン生成のアルゴリズムが具体的に記述されていれば、ケシポン発売後の出願であっても、権利化できる可能性は残されていたかもしれませんね。

 

ここからは私の妄想ですが、特開2009-255515を出願するにあたり、印面パターン生成のアルゴリズムを具体的に開示するか否かは、葛藤があったのではないかと思います。

 

最終的に、印面パターン生成アルゴリズムノウハウであるため、出願明細書にあまり具体的には記述しない、という戦略をとったのではないでしょうか。これまた私の勝手な妄想かもしれないのですが。

 

ちなみに、この印面パターン、しっかり意匠出願されています。

 

意匠登録第1335713号(2007.12.7)スタンプ印面

 

本出願は、発売よりも前に出願されています。デッドコピーは意匠出願でガッチリ保護しているという訳です。プラス株式会社さん、流石です。

 

ケシポンは、未だ進化を続けているようですので、今後も目が離せません。では、そろそろ今回の調査は完了しようと思います。