文房具特許の世界

文房具が好きで、特許を手掛かりにその背景を妄想することによって文房具をもっともっと好きになるために、ブログはじめました。といっても、文房具特許についてはド素人で、皆さんと一緒に少しずつ学んでいければと思っています。文房具カフェ会員No.01845 連絡先:bunseka.akiran@マークgmail.com

Item 15: ドットライナー: 特許を探してみた

では、いつものようにJ-PlatPatで特許・実案調査していきたいと思います。出願人=コクヨ、公報全文=ドット で検索したところ、ヒット件数は75件。発表日の2005年5月19日も考慮して、ざっと確認したところ1件ありました。

特開2006-206657(出願日:2005.1.25)粘着製品及び転写具

出願時の権利範囲はこちら↓

【請求項1】
粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなる基材とを有し、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類と他の部材とを止着させ得る粘着製品であって、
前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、
前記粘着剤層を介して前記紙類と前記他の部材とを止着させた状態から前記紙類と前記他の部材とを剥離させる剥離動作を行った際に、前記紙類の表層部を前記粘着剤層の表面に付着させ前記紙類を厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする粘着製品。

構成を限定するのではなく”紙破現象を起こし得るように構成している”という表現はなかなかチャレンジングで面白いですね。実はこの出願の実施例はこちらのドットライナーホールドタイプ。2006年6月12日が発売なので、コクヨさんは1年以上も前に開発を完了しているものをリリースしているのですね。流石です。

 

業界初・はさんで使うテープのり「ドットライナーホールド」を発売|プレスリリース|コクヨ

権利化された登録 5234556の権利範囲はこちら。下線部が最後の補正部分ですので、引用文献との差異を明確にするために材料、粘着剤部が占有する塗布面積率、占有面積等を限定していることがわかりますね。

【請求項1】
封筒の封緘などの紙類同士を止着するために用いられるパターン塗工に適したアクリル系粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルからなる基材とを有し、前記基材に前記粘着剤層を剥離可能に設け、前記粘着剤層を介して紙類同士を止着させ得る巻回保持された転写具用の感圧転写式粘着テープであって、
前記粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定し、
前記粘着剤層が前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものであり、前記粘着剤部が占有する塗布面積率を18~94%に設定することにより前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、
前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであり、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05~75平方ミリに設定し、
前記粘着剤ブロックが転写される方向である前記基材の長手方向において最も近接す
る前記粘着剤ブロック同士を、前記基材の短寸方向に相対的に偏位した状態で相互に
接触することなく噛み合うように配置し、
紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする感圧転写式粘着テープ

また、さらに本出願を基に、2件分割出願しており、2件とも既に権利化されているようです(登録 5339475、登録 5696739)。

 

想定していた新開発の糊についても出願がないか探してみました。発明の名称=粘着製品 で検索したところ、1件ありました。

特開2006-206624(出願日:2005.1.25)粘着製品及び転写具

本出願は、コクヨS&T株式会社と株式会社クラレの共同出願になっていますね。出願時の権利範囲はこちら↓ こちらは、出願時の権利範囲のまま権利化されているようです。(特許第4679165号)

【請求項1】
粘着剤層と、当該粘着剤層を支持してなる基材とを有し、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類と他の部材とを止着させ得る粘着製品であって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤がアクリル系粘着剤を主体としてなるものとし、当該アクリル系粘着剤が、
5~40質量%であるメタクリル酸メチル重合体ブロック(M)及びアクリル酸ブチル重合体ブロック(A)からなる下記一般式(I)及び(II)
M―A (I)
M-A―M (II)
で示される重量平均分子量10,000~100,000であるジブロック共重合体40~60質量部及び重量平均分子量10,000~100,000であるトリブロック共重合体60~40質量部からなるブロック共重合体組成物100質量部と、
重量平均分子量800~5,000であるアクリルオリゴマー系粘着付与剤10~35質量部と、
ロジンエステル系粘着付与剤および/又は水添ロジンエステル系粘着付与剤80~130質量部とからなるものであることを特徴とする粘着製品。

 

まとめますと、独自の加工技術によって、のりが「ドット(=点)」で紙に粘着するようにしたところと、新開発ののりについて、コクヨさんは、しっかり権利を取得していました。さらに、発売の1年以上前の段階で既に開発が完了しているコクヨさんの技術力の高さに驚きました。

以上、今回の調査は完了したいと思います。