Item 22: ユニボールエア: 特許を探してみた
では、さっそく、J-PlatPatで検索します。出願人=三菱鉛筆、公報全文=ボールペン で特許・実用新案を検索してみますと、ヒット件数はなんと1927件!! 流石、三菱鉛筆さんですね。これでは全く探す自信がないので、開発秘話のページがないかググってみました。なかなか見つからなかったのですが、トレたま関連のページにヒントがありました。三菱鉛筆の福本剛生さんが取材に応対されていたようです。福本さんをヒントに検索していくことにします。
出願人=三菱鉛筆、公報全文=ボールペン、発明者=福本 and 剛生 で検索してみますと、ヒット件数は34件。上から見ていきますと、いきなり1件目にありました~!!!
特開2016-141003(出願日:2015.1.30) ボールペン
出願時に主張する権利範囲かこちら。
【請求項1】
インクを搭載したボールペンであって、該ボールペンは異なる太さの描線を筆記可能となり、かつ、上記インクはポリビニルアルコール及びホウ酸化合物を少なくとも含むことを特徴とするボールペン。
あれ、想定していたインク流量コントロールとか、全然出てきませんね。
どうして材料限定だけでも新規性があるのか、関連しそうな出願明細書を引用します。
「この組成となるインクは、異なる太さの描線が筆記可能となる本第1実施形態のボールペンのインクに好適なものとなる。なお、このインクは、上記特性のポリビニルアルコール種、ホウ酸化合物種、各含有量などを好適に組み合わせることなどにより、後述するようにダイラタント流体特性を有しないものとなる。」
なるほど。権利範囲が規定するような組成のインクは、異なる太さの描線が筆記可能となるボールペンのインクに好適で、ダイラタント流体特性を有しないとのこと。ダイラタント流体特性ってなんだ? 関連する部分を引用します。
「実施例1のインクについて、ダイラタント流体特性の有無を確認したところ、表2の測定結果から明らかなように、剪断速度1~381s-1(25℃)の剪断速度の領域において、ダイラタント流体特性(剪断速度の増大とともに粘度が大きくなる流体の状態)が無く、剪断減粘性を示すことを確認した。また、実施例2~5の各インクにおいても、剪断速度1~381s-1(25℃)の剪断速度の領域において、ダイラタント流体特性が無く、剪断減粘性を示すことを確認した。
更に、ボールペンとして、図7~図12に準拠するボールペン〔三菱鉛筆株式会社試作、ボールペンチップ:超硬合金ボール、ボール径0.7mm〕を用いて、実施例1~5で用いたインクを搭載して、上記各評価方法で評価したところ、実施例1~6のインクを用いた(図1~図6準拠の)ボールペンと同様に、描線幅が可変可能であっても、太線部の描線乾燥性の低下や、太線部の滲み、細線部のカスレもなく、細線部から太線部への連続性もスムースに筆記できることを確認した。」
ダイラタント流体特性を十分理解できませんが、ダイラタント流体特性は無い方が望ましく、これまで、そのような特性を持ったインクと、異なる太さの描線を筆記可能なボールペンとを組み合わせたものがない、ということで、請求項1にしたのだと推測します。
さらに、請求項4に、書き方・筆圧によって描線幅を変化させることができるというポイントに関する文言がありましたので紹介しておきます。
【請求項4】
前記ボールペンは、1つの筆記先端で異なる太さの描線を筆記可能となるものであり、筆記ボールと、先端をかしめたカシメ部により前記筆記ボールを保持するホルダーと、ホルダーにインクを供給するインク供給部と、インク供給部を内部に収納する軸筒と、前記ホルダーの外周を覆うアウターとを備え、前記筆記ボールを保持したホルダー及び前記アウターの一部を前記軸筒の先端部より露出させてなり、前記筆記ボールとアウター先端部が筆記部となることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載のボールペン。
おそらく、ボールペンを立てて書くと、筆記ボールだけが筆記部となり、描線は細くなり、ボールペンを寝かせて書くと、筆記ボールだけでなく、アウター先端部も筆記部となるので、描線が太くなるのだと思います。
この辺りの仕組みは公式ホームページに図解されていますので、詳細を知りたい方はこちらをご参照ください。
ユニボール エア | uni-ball AIR | 水性ボールペン | ボールペン | 商品情報 | 三菱鉛筆株式会社
プレスリリースや、商品紹介公式ホームページは、新開発チップが中心ですが、実は、異なる太さの描線を筆記可能なボールペンに、最適なインクを組み合わせたところに、イノベーションが隠されていたのですね。奥深いですね。
それでは、そろそろ今回の調査を終了したいと思います。