Item 67: ホソミ: 特許を探してみた
それでは、J-PlatPatで検索していきます。
ハサミの呼称がいろいろありそうなので、出願人=コクヨ、公報全文=鋏 or はさみ or ハサミ で特許・実用新案を検索。結果、ヒット件数は、38件。上から見ていくと、1件目が「ホソミ」に関連しそうです。
特開2015-146832(出願日:2014.2.4)鋏
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H27146832/743AEFEB94598B7035F356447C948A5D
請求項はこちら▼
【請求項1】
柄、及び刃線を有する刃片をそれぞれ備えた対をなす鋏身と、これら対をなす鋏身を回動自在に結合する軸とを有する鋏であって、
一方の鋏身の柄が使用者の親指による操作力を受け付けるための第1の指掛けを有し、
他方の鋏身の柄が使用者の親指以外の指による操作力を受け付けるための第2の指掛けを有し、
前記第1の指掛けが、前記第2の指掛けよりも前記軸に近い側に配され、かつ前記第2の指掛けと異なる方向に開口している鋏。
「ホソミ」の最大の特長である立体ハンドルの形状を、「前記第1の指掛けが、前記第2の指掛けよりも前記軸に近い側に配され、かつ前記第2の指掛けと異なる方向に開口している」という表現で、巧みに表見していますね。
その効果を、課題を解決する手段の中で、以下のように表現しています。
【0008】
このようなものであれば、第1の指掛けを第2の指掛けよりも軸に近い側に配することにより鋏を閉じた状態における鋏の幅寸法を小さくすることができる。その上で、第1の指掛けと第2の指掛けとが異なる方向に開口しているので、自然な態様でこの鋏を把持することができ、使いやすさの向上を図ることができる。
まさに、「ペンケースにすっぽり入るスリムなサイズでありながら、握りやすさを実現」するための必要最低限の構成が、請求項1にあたるようですね。
参考までに、対応する意匠出願も見つかりましたので、紹介しておきます。
意匠登録第1510327号(出願日:2014.3.12)はさみ
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/DE/JPS_1510327/5B600F2CC9AEFACF758A48796CE82CB8
「ホソミ」は、Item 56として紹介した「刃裟美」以来の衝撃でした。
こういったdisruptiveなデザインを提案していくなかで、また新たなデファクトなデザインが生み出されていくのではないでしょうか。
今後も、コクヨさんはじめ、文房具業界のチャレンジを見守っていきたいと思います。
この辺りで、今回の調査を終了します。
Item 66: ノリノ ビーンズ: 特許を探してみた
では、早速、J-PlatPatで検索していきます。
「ノリノ ビーンズ」はテープのりですが、テープのりというのは特許用語ではなさそうなので、ひとまず、意匠全検索アプローチでいってみますね。
出願人=プラス株式会社 で意匠を全検索したところ、ヒット件数は353件。お、「ノリノ ビーンズ」のシルエットに酷似している出願を見つけましたよ。
意匠登録第1444849号(出願日:2011.11.29)事務用塗膜転写具
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/DE/JPS_1444849/62C22A7B9BB35AD5997E4CFA7D8DC53C
【意匠に係る物品の説明】はこちら▼
本物品は、修正塗料や粘着剤等を表面に膜状に付着させた塗膜テープを、書類等の紙面上に押し当て、移動させながら前記修正塗料等を紙面に転写するものである。使用時には、「参考斜視図」に示すスライドシャッター開閉つまみ部をスライドすると、「参考斜視図」に示すスライドシャッターが開口し、「使用状態を示す参考斜視図」に示すとおりヘッド部が現れ使用可能状態となる。
このスライドシャッターが、スライド式“ウインドウキャップ”にあたるもののようですね。
創作者は、有賀博之氏、成田康夫氏、福田瑞穂氏のお三方。今度は、特許・実用新案をお三方のお名前で検索してみました。検索結果は以下の通り。
出願人=プラス、発明者=有賀博之 ⇒ ヒット件数は、0件
出願人=プラス、発明者=成田康夫 ⇒ ヒット件数は、10件
出願人=プラス、発明者=福田瑞穂 ⇒ ヒット件数は、0件
検索結果から推定するに、成田さんがメカ屋さんで、有賀さん、福田さんはデザイナーさんでしょうか。成田さんは、こちら▼の「ノリノ」に関連する特許出願はされているようなのですが、「ノリノ ビーンズ」に関する特許出願を特定することはできませんでした。
「ノリノ ビーンズ」に関する調査はこの辺りで終了しますが、有賀博之氏、福田瑞穂氏について、もう少し調査していきます。
ここで、遅ればせながら、「ノリノ ビーンズ」がグッドデザイン賞を受賞されていることがわかりました。
この記事の中で、有賀博之氏、福田瑞穂氏の受賞当時の経歴がわかりましたよ。
有賀デザインスタジオ 有賀博之
プラス株式会社ステーショナリーカンパニー マーケティング統括本部 第二製品事業部 福田瑞穂
有賀さんは、外部のデザイナーだったのですね。有賀デザインスタジオのホームページはこちら。
有賀さんは、プラス株式会社の多くのプロダクトのデザインを担当されているようです。そのラインナップはこちら▼ 有賀さんは、プラス株式会社のテープのり、修正テープの歴史を築き上げてきたデザイナーさんのようですね。
「スピンエコ」
「フレックス」
「ラッシュ」
「ノリノ」
次に福田さんについても少しググってみました。 マーケティング統括本部の方なので、マーケティングや営業がご専門の方かと思いきや、FBの情報によると、武蔵野美術大学でインダストリアルデザインを専攻されていたようなので、バリバリのデザイナーのようですね。プラス株式会社では、デザイナーがマーケもやるのでしょうかね。
そんな中、福田さんが、THE21 2005年10月号で、輝くビジネスウーマンとして紹介さていたこともわかりました。プラス株式会社の代表として雑誌に載ってしまうなんて、凄い。
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/510JNFM9HBL.jpg
いま輝くビジネス・ウーマンの肖像 32
福田瑞穂(プラス ステーショナリー マーケティング本部) 取材・文/横田由美子
p61
ここからは妄想も入りますが、ベテランのプロダクトデザイナー有賀氏、数々のテープのりのメカを手掛けてきたエンジニアの成田氏、顧客のニーズを知るマーケ担当でありインダストリアルデザインのスキルもある福田氏の有機的な化学反応により、「ノリノ ビーンズ」という、画期的なメカ構成を備えながら、洗練され、顧客に寄り添うファンシーなデザインのプロダクトが誕生したのではないでしょうか。
今回は、このあたりで調査を終了します。
Item 65: ミリケシ: 特許を探してみた
それでは、今年の最後の調査を進めていきますね。
まずは、J-PlatPatで、コクヨの消しゴム関連の出願を検索していきます。出願人=コクヨ、発明の名称=消 で特許・実用新案を検索したところ、ヒット件数は6件。発明の名称が”消しゴム”という特許出願が2件見つかりましたが、いずれも「ミリケシ」関連ではなさそうですね。
同様に、出願人=コクヨ、意匠に係る物品=消 で検索したところ、ヒット件数は7件。あ、そのうち、2件の図面が「ミリケシ」に酷似していますよ。
ここで、新しく、特許情報固定アドレスサービス対応(試行版)(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/NEWS/20161226_01.pdf)が始まったようですので、意匠出願の固定アドレスも貼っておきますね。
意匠登録第1390970号(出願日:2009.9.15)消しゴム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/DE/JPS_1390970/DB7075618799BBA1A68E65464AA54111
意匠登録第1401516号(出願日:2009.12.1)消しゴム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/DE/JPS_1401516/911AD181568339ED6A58B575DFB8A160
いずれも馬場雄二氏が創作者の様ですね。
馬場雄二の特許出願も気になりましたので、発明者=馬場雄二 で特許・実用新案を検索したところ、ヒット件数は13件。その中で、消しゴムに関するものが2件ありました。
特開2010-47001(出願日:2008.8.21)消去幅選択可能な消しゴム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H22047001/0DE0628B51766DCED21BFF3BA227759C
請求項はこちらです。
【請求項1】
字消し部の幅になる頂陵部を、本体の外周に多数設け、必要とする消し幅の頂陵部を、適時選択し使用できることを特徴とする消しゴム。
図面の固定リンクがなく、ご紹介できないのが残念なのですが、「ミリケシ」とは少し形状が違うものの、消し幅を適時選択できるというコンセプトは開示されています。
さらに、もう1件類似の出願をしています。
特開2010-52411(出願日:2008.8.29)消去幅選択可能な多角柱消しゴム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H22052411/0DE0628B51766DCE9079080A893F553B
請求項はこちら。
【請求項1】
字消し部の幅になる頂陵部を本体の外周に多数設け、必要とする消し幅の頂陵部を適時選択し使用できることを特徴とし、多辺形の平面図の型から抽出した多角柱を輪切りにして完成形が得られる経済性を特徴とする消しゴム。
実は、本出願の図8として紹介されている消しゴムの外観が、放射上に複数の突起が形成されており、「ミリケシ」に酷似しています。ただ、本出願の突起は6つですが、「ミリケシ」の突起は5つですね。
前記事で紹介したプレスリリースによると、コクヨさんが行った2009年のWEB調査によって「消す幅に合わせて消しゴムを使い分けたい」というニーズが多いことが分かったとのこと。
妄想するに、、、
そんなニーズを知るコクヨさんと、そのニーズを解決する手段を持つ馬場氏が出会い、コラボレーションを進めていく中で、特開2010-52411の突起6つタイプがブラッシュアップされていって、結果、突起5つタイプの「ミリケシ」が生まれたのではないでしょうか。
このあたりで調査を終了します。
みなさま、よいお年をお迎えください。
Item 64: NOLTY U 365: 特許を探してみた
早速、「NOLTY U 365」の公式ホームページに掲載されている特許第5945028号、意匠第1537429号をJ-PlatPatで検索していきます。
特許第5945028号(出願日:2015.4.27) 手帳
登録となった請求項と、「NOLTY U 365」のニュースリリースで紹介されている特長との対応関係を確認していきます。
http://www.jmam.co.jp/assets/images/topics/Picture0003.png
【請求項1】
自分の予定・家族の予定・関心事項の進捗状況の確認予定・などの複数のテーマごとに時間が重なる複数の予定などを記入可能にした手帳であって、
見開いた左右の各ページをそれぞれ連続する1日分の記入用として前記各ページに付された連続する月日および曜日と、
⇒ニュースリリースの画像例の、3.31 木、4.1 金にあたります。
左右の各ページに設けられ前記テーマごとに分けて一日分の予定を書き込み可能とした複数本の時間目盛り付き罫線と、
⇒この「複数本の時間目盛り付き罫線」が「スケジュールライン」ですかね。
これら罫線の下方に連続して設けられたメモ欄と、
⇒「メモ欄」が、「グリッドノート」でしょうか。
前記左右の各ページの下縁に沿って前記左右の各ページに渡って左から右に順次付された1週間分の曜日の表示のうち開いた前記左右の各ページに該当する連続する2つの曜日を識別可能とする表示と、
⇒この表示は、「ウィークバー」と思われますね。
を有することを特徴とする手帳。
3つの特長を的確に表現した秀逸な請求項で権利化されていますね。
続いて、意匠も確認しました。
意匠第1537429号(出願日:2015.4.28) 手帳用紙
【意匠に係る物品の説明】も引用しておきます。
本物品は、横方向中央部で綴じることにより手帳として使用する用紙であり、折りたたみ可能な見開き表面左右2頁、同裏面左右2頁の計4頁の記入面を有するシートからなり、手帳を開いた時に、二日分の日記欄を有する。使用状態を示す参考表面図に示すように、左頁左上部と右頁左上部には日付として月日(数字)と曜日(漢字と英語省略表記)が表示される。右頁右上隅には右頁当該月の月カレンダーが印刷される。各頁の日付欄の下には30分ごとの時系列を示す点線が印刷され、この点線中、3時間ごとの9時、12時(これのみ赤色に着色)、15時、18時、21時には当該時を示す数字が印刷され、またこれらの数字に挟まれた各時(10時、11時、13時、14時、16時、17時、19時、20時)と21時以降の各時(22時、23時、24時)の点は大きく印刷されている。この時系列点線の下には点間隔を狭めた4本の点線が印刷され、上側の時系列点線の各時刻に対応する点は若干大きく印刷されている。これにより、4本の点線には時系列に沿ったスケジュール、予定を記入することができる。4本の点線の下部は細点によりマス目が印刷された方眼が印刷され、自由記入欄となっている。左頁の最下段には曜日の英語略号M(Monday)、T(Tuesday)、W(Wednesday)、T(Thursday)が印刷され、右頁の最下段には曜日の英語略号F(Friday)、S(Saturday)、S(Sunday)が印刷され、左右頁を通して1週間分の曜日が表示される。そして、左右頁の当該曜日に該当する英語略号欄はグレーの濃淡で着色されている。右頁右縁には、当該月を表示する数字が印刷されている。
そして、驚きなのは、発明者、創作者ともに、NOLTYの生みの親である、NOLTY企画部長の二宮昌愛さん。部長自ら発明とは驚きです。こちら▼の記事でも二宮さんの手帳愛を感じますね。
二宮部長の拘りによって生まれた3つの特長については、特許、意匠により強力に保護されており、今後も、NOLTY独自の1頁1日タイプの手帳として、輝きを放っていくのではないでしょうか。
今回の調査はこのあたりで終了いたします。