文房具特許の世界

文房具が好きで、特許を手掛かりにその背景を妄想することによって文房具をもっともっと好きになるために、ブログはじめました。といっても、文房具特許についてはド素人で、皆さんと一緒に少しずつ学んでいければと思っています。文房具カフェ会員No.01845 連絡先:bunseka.akiran@マークgmail.com

Item 32: ナカプリバイン: 特許を探してみた

すでに特許番号もWikiに公開されているのですが笑、いつものようにJ-PlatPatで検索していきたいと思います。出願人=中村印刷所 で特許・実用新案を検索したところ、ヒット件数は4件。その中で、「ナカプリバイン」関連は2件。

 

特開2016-002717(出願日:2014.6.17)無線綴じ冊子の製本方法

特開2016-101678(出願日:2014.11.27)無線綴じ冊子の製本方法

 

実は、後の出願(特開2016-101678)のみ早期審査が請求され、2015.5.15に登録されてます。先日ご紹介した「ナカプリバイン」の方眼ノートにマーキングされている特許番号(特許第5743362号)がこちらの番号ですね。

f:id:bunseka_akiran:20160910002545p:plain

 

ここで、登録された請求の範囲をご紹介しておきます。

【請求項1】

複数の紙材の束からなる本文と、これをくるむ表紙材とを前記本文の背面に塗布した接着剤によって接着させてなる無線綴じ冊子の製本方法であって、

前記表紙材の裏面中央領域に該表紙材を表表紙部、背部及び裏表紙部に区画するように所定の間隔だけ離して設けた2本のスジ又は折り目のうちの一方を反対側に折り曲げて2つに折り、当該一方の折り目を前記本文の背面の側縁に揃えて当該表紙材を前記本文に沿わせて積層配置する工程と、

当該表紙材の折り目を含み前記本文の背面全面にコールドグルー接着剤である第1の接着剤を層状に塗布する工程と、

前記第1の接着剤層表面の固化が認められたところで、当該表面の全面に当該第1の接着剤よりも相対的に高粘度の第2の接着剤を層状に塗布する工程と、

前記第2の接着剤塗布後に前記表紙材で前記本文をくるみ、当該本文の背面を押圧状態に保持したまま乾燥させる工程とを含むことを特徴とする無線綴じ冊子の製本方法。

 

これは、ナカプリバインのWikiのページにて、画像でわかりやすく説明されているので、Wikiの画像を引用いたします。

ナカプリバイン - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f5/How_to_make_a_NAKAPRIBIN.png/400px-How_to_make_a_NAKAPRIBIN.png

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f5/How_to_make_a_NAKAPRIBIN.png/400px-How_to_make_a_NAKAPRIBIN.png

 

それぞれの製造工程の番号との対応がわかるように、番号を付しておきます。

【請求項1】
複数の紙材の束からなる本文と、これをくるむ表紙材とを前記本文の背面に塗布した接着剤によって接着させてなる無線綴じ冊子の製本方法であって、

1. 前記表紙材の裏面中央領域に該表紙材を表表紙部、背部及び裏表紙部に区画するように所定の間隔だけ離して設けた2本のスジ又は折り目のうちの

2. 一方を反対側に折り曲げて2つに折り、当該一方の折り目を前記本文の背面の側縁に揃えて当該表紙材を前記本文に沿わせて積層配置する工程と、

3. 当該表紙材の折り目を含み前記本文の背面全面にコールドグルー接着剤である第1の接着剤を層状に塗布する工程と、

4. 前記第1の接着剤層表面の固化が認められたところで、当該表面の全面に当該第1の接着剤よりも相対的に高粘度の第2の接着剤を層状に塗布する工程と、

5. 前記第2の接着剤塗布後に前記表紙材で前記本文をくるみ、当該本文の背面を押圧状態に保持したまま乾燥させる工程とを含むことを特徴とする無線綴じ冊子の製本方法。

 

ここで、ちょっと気になるのが先の出願である特開2016-002717の内容。こちらは早期審査されていないようですね。出願時の権利範囲はこちら。特許第5743362号の権利範囲と比較するため、同様に製造工程の番号を付してみました。

【請求項1】

1. 表紙材の裏面中央に2本のスジを紙材積層体の厚さに略合致する間隔に平行に刻設する工程と、
2. 前記表紙材を前記スジの一方を折れ目にして反対側に略2つ折りし、当該一方のスジを前記紙材積層体の背となる面に揃えて当該表紙材を積層配置する工程と、
3. 前記紙材積層体における背となる面から前記表紙材の一方のスジ内まで連続して第1の接着剤を塗布し、その後に乾燥させる行程と、
4. 前記紙材積層体の前記表紙材を重ねた側から当該第1の背着剤層に重ねて、第2の接着剤を当該紙材積層体の厚さの40~70%の幅でかつスジの長さ方向全長にわたり塗布し、

5. 前記2つ折りした表紙材を今度は前記スジの各々が内側になるようにそれぞれを折れ目にして折り曲げ返してコの字状に形成し、前記紙材積層体の第2の接着層を塗布した背部分及び表裏面を包む工程と、
加熱具を用いて前記表紙材の背部分を加熱しながら外側から押圧し、前記第2の接着剤を前記一方のスジ及びその近傍を除く前記第1の接着剤層全面から前記スジのうちの他方の内部に連続的に拡散させる工程と、
前記表紙材の背を内部の前記積紙材層体に向けて外側から押圧状態に保持したまま前記第2の接着剤を硬化養生させる工程と、を含む無線綴じ冊子の製本方法。

 

特に、特許第5743362号の権利範囲と違う部分は、上記の青字部分。5までの製造の後の工程まで限定しているようですね。

 

先の出願の請求項の方がより限定的である、という点は少々違和感があるのですが、おそらく、接着剤の塗布の仕方など、より最適なパラメータが明らかになってきたので、その最適なパラメータを実施例として半年後に再出願したのではないかと予想されます。あくまでも、私の妄想ですが(^^ゞ

 

登録されている請求項を改めて眺めてみましたが、解説する図面からもわかるように、非常にコンセプチュアルなカタチで権利化されている、という印象です。これも、職人である中村さんが度重なる試行錯誤の結果、最終的に、「その手があったか」的なシンプルな製造方法の発見に行きついたからではないでしょうか。

 

「ナカプリバイン」の裏のストーリーをもっと知りたい方は、是非、こちらをチェックしてみてください。

  

このあたりで本日の調査は終わろうと思います。